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父の死 

先月父が他界した。
思いを記録に残そうと思い、何度も何度も書き始めたけれども、これまでの楽しかった思い出や悲しみみたいなものがこみ上げ、手がとまってしまった。そして、死後1ヶ月たってやっと心の整理ができてきた。

今年の2月に父が車で事故を起こした。単独事故なのでけが人はいなかったが、事故の経緯があまりにもおかしかったので母が病院につれていったところ、かなり深刻な病気が見つかった。小細胞がんという小さな病原が父の肺に住み着いていた。さらに悪いことに、既にリンパ節にも転移が確認され、脳にいたっては大小あわせて30個以上もの転移が見つかった。俗にいう末期だった。

いまでも最初の電話を受けたときの衝撃は覚えている。早朝に電話が鳴り兄の声が聞こえた。
「大事な話があるから、顔を洗ってこい」
顔を洗っているときに、心臓をばくばくさせながらいい知らせではないことを予感していた。その後数日まったく研究もできず、たまらずに緊急帰国することにした。

帰国直後の父は、全脳照射の治療を行っている最中ではあったもののまだまだ元気で、話もたくさんすることができた。その後の抗がん剤治療も幸いなことに副作用も少なく、髪の毛もだいぶ残った。髪の毛がすべて抜けて落ちこんでいるであろう父を少しでも励まそうとして、自分の頭をかなり短い坊主にもしてみたが逆に心配されたこともあった。

その後数ヶ月、脳の転移のせいで物事を理解しにくくはなったが、時折見せる父の穏やかでユーモアのあふれる性格によって、深い悲しみの中でも何度も癒された。こんな極限状態になっても、周りを笑わせることができる人柄は、父に本質的に備わったものなんだろう。

病室には父の友人が何人も訪れた。そこで、これまで知らなかった父のエピソードを聞くことができた。考えてみれば、父の大学や所属していた会社の友人にあったことはあまりなく新鮮だった。

9月初旬、それまで順調だと思われた治療も、はやり他の症例と同じように更なる転移が見つかった。今回は脳と骨にも転移がみつかり、母は、父の体力と病状を考慮し、その後は抗がん剤治療を行わずに緩和のみを行うという方針をとった。苦渋の決断だったに違いない。そして、11月10日に父は永眠した。そのとき、自分は帰国する飛行機の中だった。父の葬式はいつ自分が泣き崩れてもおかしくない心境だった。火葬直前の父の顔、母の悲しすぎる顔、それを支える兄、これらの光景は絶対に一生忘れないだろう。

子供が親より早く死ぬことは、最大の親不孝だと聞いたことがある。それは逆に子供は親の死を乗り越えなければならないということ。なんでこんなプライベートなことを書いているかというと、周りの人に

-タバコを吸っている人はできればやめてほしい
-家族を大事にしてほしい

ということを伝えたかったから。タバコは本当にやめたほうがいい。できなければ、数を減らしてほしい。自分がくるしむだけじゃなく、まわりが一番悲しむのだから。親は本当に大事にすべき存在だと思う。日本は親と仲良くしすぎるとマザコンやファザコンといわれるような習慣があり、照れくさくもある。一方アメリカは本当に親、家族を大事にするし、それを周りにも見せる。これは本当に見ていて心温まる光景だ。この2つは今回痛烈に思ったことで、自分もこれから肝に銘じていこうと思う。

自分が留学し好きなことをできているのは、まちがいなく家族のおかげだ。妻がいて、兄がいて、母がいる。これまでは父もいたがその大きな柱がなくなり,今度は一家を兄がなくなった父の分も家族を支えている。葬式のときの兄の立ち振る舞いが非常に立派だと好評だった。たしかにそうだった。こうやって親から子へ世代が受け継がれていくのだろう。さて、次男の自分はいまだに学生。まだまだ大きな柱にはなれていないが、自分の家族を支えられるような大きな存在になりたい。

最後に、この数ヶ月いろいろな方に迷惑をかけました。本当に申し訳ありませんでした。
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